マンツーマン・ディフェンスの考え方

LastUpdate 98/7/20

はじめに

 ディフェンスはバスケットボールにおいてシュートに次いで最も重要な技術のひとつです。特にマンツーマン・ディフェンスは、どのようなタイプのディフェンスを行う場合においても基礎となる動作(ファンダメンタル)で、すべてのバスケットボール・プレイヤーが習得すべき技術です。これらのファンダメンタルを身につける事により、いくつかの原則を付け加える事で様々なディフェンス・システムに対して適応する事が出来ます。
 ここで述べるのは、プレッシャー・マンツーマン・ディフェンスの基本動作についてです。このディフェンスは現在多くのチームで行われており、標準的なディフェンス・システムとなりつつあるものです。


ディフェンスの目的

 オフェンスに対してアクションを開始して、相手を当惑させ、意図するプレーをさせない。
 積極的にボール・スティールなどのギャンブルを狙うのではなく、相手のミスを誘うようにディフェンスを行う。
 相手にはシュート入れさせない事、次にたとえ入れられてもその過程を非常に困難なものにする事、ゲームプラン通りにさせない事をディフェンスの原則とし、精神的・肉体的にストレスを与える。


ディフェンスの目的を達成するための目標

 相手にプレッシャーを与えてドリブルをさせ(ボール・プレス)、そのままサイドラインに追い込む(ファン・ディフェンス・システム
 ディフェンスがボールマンに対してボールプレスを行いドリブルをさせる事によって、オフェンスの動きを少なくさせてディフェンスを楽にする事ができます。そして、ボールマンがコートの中央にいるよりもコートサイドにいるほうがパスコースが狭められる事によって、他のプレイヤーのディフェンスがより簡単になります。このため、ディフェンスは常にボールをサイドラインの方向へ行かせることを目的とします。
 ボールプレスされている状況から出されるパスに対して簡単にパスされないようにする(ディナイ・ディフェンス
 それぞれのオフェンスプレーヤーに対しては、簡単にパスを受けることができないようにオーバープレイして、またすべてのパスレーンを防ごうとします。このことによって、オフェンスが意図しない動き(本来のポジションから外れた位置でボールを受ける、中途半端な状態でドリブルを行う、など)を行う事になります。
 ヘルプサイドからヘルプを行い、常にこの積極性を保つ(ヘルプ・ディフェンス
 ファンディフェンスを行う事によってヘルプサイドを作る事が出来、また、ボールプレスを行う事によって離れた位置にいるプレイヤーへのパスを出す事を難しくさせます。このために、ヘルプサイドにいるディフェンス・プレイヤーは積極的にヘルプを行う事が出来ます。
 常に声を出して、プレイヤー同士でコミュニケイションを取る(ディフェンシブ・ボイス
 味方同士のコミュニケイション、さらにコーチとのコミュニケイションはディフェンスにおいて非常に重要で、プレイヤーが常に意識していなければならない技術です。ディフェンシブ・ボイスは簡単なキーワードによって行い、出来るだけ短い時間で意志疎通が行えるように練習すべきです。ディフェンスボイスによって、ディフェンスでの予測(スクリーンプレイ、ヘルプディフェンスなど)を行うことが出来、オフェンスに対してプレッシャーを与えることが出来ます。


参考文献

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